顧客本位を訴える金融庁のせいで毎月分配型投信の販売が不調?他に合理的な選択があるからでは?

2017年5月28日日曜日

投資信託の注意点

t f B! P L

顧客本位を訴える金融庁のせいで金融機関が販売自粛を強いられ毎月分配型の投資信託が売れ行きが落ち込んでいると経済紙が記事にしています。

以前には毎月分配型の投資信託にもこまめに利確したいという顧客のニーズがあると書いていました。今度は金融庁の方針のせいで国内REITを保有する毎月分配型の投資信託から投資資金が流出しているためにREIT市場の需給の悪化につながっているとまで主張されています。

国内REITの需給の悪化は公募増資が相次いだことが理由だと思うのですが、顧客にとって手数料の割高な毎月分配型を取り上げ擁護するかのような経済紙は、いったい誰の意向を「忖度」しているのでしょうね? ……なんて冗談はさておき(苦笑)、毎月分配型以外の選択肢について考えてみました

金融庁の方針

金融庁はウェブサイトでも行政方針を公開しています。

金融行政方針 平成28事務年度金融行政方針 主なポイント(PDF)

この中で金融庁は「国民の厚生の増大を目指す」ために必要な変革として「国民の安定的な資産形成を実現する資金の流れへの転換」を挙げています。

「家計における長期・積立・分散投資の促進」と同時に、「金融機関等による顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の確立と定着」も目標としています。後者は以下の2点を課題としています。

手数料稼ぎを目的とした顧客不在の金融商品販売
商品・サービスの手数料水準やリスクの所在が顧客に分かりにくい

毎月分配型以外の選択肢

金融庁の問題視する手数料稼ぎを目的とした割高な毎月分配型の投資信託ではなく、廉価なインデックスファンドを拡販し、投資信託の定期売却サービスを用意するほうが正攻法ではないかと思うのですが、それでは儲からないということなのでしょうか。

下の表は、とある金融機関で販売上位の海外REITに投資する毎月分配型ファンドと、同じく海外REITに投資するインデックスファンド(※)を比較したものです。販売時手数料は上限です。過去の成績は将来の運用成績を保証するものではありません。

2017年5月26日現在 分配金(税引前)を再投資と仮定

他にも毎月分配型の投資信託が販売上位に入っていて、本当に販売が自粛されているのか疑問があります。毎月分配型の資金流出と販売不振の理由は、販売側の自粛ではなく賢明な顧客側の利確や様子見もあるのでは?

ちなみにこの毎月分配型の投資信託の分配金利回りは6.04%ですが、月報によると投資信託が投資しているREIT(不動産投資信託)の配当利回りの加重平均は4.8%となっています(2017年4月末現在)。

REITがずっと値上がりを続けるなら投資信託の分配金利回りのほうが投資先の配当利回りよりも高くても分配金を出し続けることは可能ですが、現実的な想定ではないですよね。

※ <購入・換金手数料なし>ニッセイグローバルリートインデックスファンド。S&Pグローバルリートインデックス(除く日本、配当込み、円換算ベース)という指数の動きに連動する投資成果を目標にしています。このファンドへの投資を推奨するものではありません。

投資信託の定期売却サービス

SBI証券では投資信託の定期売却サービスが用意されています。「毎月コース」のほか、「奇数月コース」、「偶数月コース」から選択でき、年2回まで「ボーナス月コース」の設定を組み合わせることもできます。

このサービスを使うことで、毎月分配型投資信託よりも手数料の安いインデックスファンドを毎月分配型のように利用するも可能です。SMBC日興証券や野村証券でも同様のサービスがありますが、今のところ対象となる投資信託がごく一部に限られています。

もっとも定期的に売却するよりは必要なタイミングで換金するほうが合理的ではあります。

まとめ

毎月分配型の投資信託は手数料が割高です。元手が100万円だとすると購入時に2~3万円の手数料を引かれ、毎年1万円~2万円の運用管理費用(信託報酬)の負担も必要です。分配金によって運用効率も落ちます。

金融庁は行政方針として「企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大を目指す」としています。残念ながら毎月分配型の投資信託は「安定的な資産形成を実現する」手段としては不向きですし、金融機関への不信感を募らせる原因にもなるとしたら「企業・経済の持続的成長」に役立つこともないでしょうね。

こぼれ話
こちらもなかなか興味深いです。

・PDF「フィンテックは共通価値を創造できるか」(金融庁長官講演)

「供給側の論理によるマス定型商品の提供」という B2C 型のビジネスモデルから、「顧客情報に根ざす共通価値の創造」という C2B 型ビジネスモデルへと移行するための環境が整
いつつある過程なのではないか




関連記事
安全資産の置き場所を考える 銀行によって金利に差はある?100万円を1年預けて利息はいくら?
基準価額が2,000円台で毎月100円の分配金はお買い得?『グローバル・リート・トリプル・プレミアム・ファンド』
『ニッセイグローバル好配当株式プラス』を米国株配当貴族やニッセイ外国株式インデックス、セゾン等と比較
損失限定保証付き投資信託『あんしんスイッチ』の特徴は?8資産均等型や世界経済IFと成績比較
新興国投資の光と影 豊富な人口と資源を持ちオリンピックも開催された国の投資信託の成績は?
好調さで話題になった投資信託に飛びつくとその後の成績は…?分散投資は万能ではないけれど
投資信託が値下がりした損を分配金で取り戻せる?分配金は精神安定剤という人に知ってほしいこと
NISAと個人型確定拠出年金をどう活用する?個人型確定拠出年金は60歳まで解約できない欠点も
ラテマネー 朝やお昼の100円コーヒーのかわりに投資信託を10年積み立てたら、いくらになる?

楽天Kobo新・投資信託にだまされるな!買うべき投信、買ってはいけない投信【電子書籍】[ 竹川美奈子 ]
Amazon Kindleめちゃくちゃ売れてるマネー誌ザイと投信の窓口が作った投資信託のワナ50&真実50【電子書籍】[ 植村佳延 ]

ブログ村 投資信託
投資信託が話題のブログのリンク集
ブログ村 インデックス投資
インデックス投資が話題のブログのリンク集
ブログ村 家計管理・貯蓄
家計管理・貯蓄が話題のブログのリンク集
NISA 人気ブログランキング
NISAが話題のブログ人気ランキング

注目の記事

銀行こわい…未利用口座の管理手数料に加え繰越時の通帳発行手数料まで/全世界株(オルカン)、先進国株、国内株、米国株(S&P500)、新興国株 各インデックスファンドの成績 

主だった インデックスファンドの2024年2月末時点の成績 を確認してみました。 ところでネット証券やネット銀行の隆盛で、地元の銀行とご無沙汰していたら「未利用口座管理手数料引き落としのお知らせ」なるハガキを受け取ってしまいました。翌々月末までに取引がないと口座管...

よく読まれている人気記事

QooQ